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魔物は学校に潜んでいるのだ。
2008/08/20(Wed)

 担任らしい教師は、背の高い中年の男だった。スーツの似合わない大柄で人生に疲れたような顔をしている。そんな彼の目は生きることに諦めを感じているような家畜の目だった。それを見て、僕は『今度、動物園や牧場で動物を見かけたときは誰よりも優しくしよう』と心に決めた。

「さて。全員揃ったな――あー、一人足んねーな」

 普通であれば、入学初日から遅刻してくるような人間なんていない。
 でも、わずか一時間の間に僕は学んだのだ。『普通な日常はあの日本アルプスのかなたに飛んでいってしまったのだ』と。
 入学すると思っていた高校は既に廃校になっていて。入学式ドッキリ☆イベントを姉と友人によって成し遂げられて。入った先の高校は『元女子校』で。クラスメートはショタとスポーツ少年に皮肉屋、笑顔でむごいことをする(推定だけれど、きっと間違っていないに違いないと僕は信じている)無邪気な子、に加えて元番長。実にバラエティに富んでいる。ロクに話していない島くんや柊くんにも何かクセがあるんじゃないかと思えてならない。

 いや。むしろ、彼らがオカマであっても、僕はもう驚かない。絶対に。

「遅れてすみません!」

 バッタン。引き戸を勢いよく開けて、鉄砲玉みたいに飛び込んできたのは、入学初日だというのによれた制服を着たクラスメートだった。所々、泥にまみれていたりもしたが、彼はまったく気にしなかった。

「自転車が車で撥ねられて、一緒に跳んでったらマンホールに指突っ込んじゃってとれなくなっちゃたんだよね。三浦健太です、みんなよろしくね!」

 きらり、肘を折り曲げて親指、人差し指、小指を立てて彼は笑った。アイドル系の顔立ちだから、まぁ似合っていないとは言わない(ただ、ちょっとばっかし、彼の頭の具合が心配になった)。往年の少女漫画にそういうポーズあったなぁ、姉にやらされたなぁとか思い出す。
 しかし、彼が言うようなそんな面白いことが果たして実際にあるだろうか。ぐっと、言いたいことを堪える僕とは逆に、担任教師は「そうか。座れ」と、軽々と受け流した。

「突っ込まないんだ、へぇ」

 誰かの小さな呟き(たぶん。声のトーンからして新見くんだと思うが定かじゃない)をも受け流して続ける。

「じゃあ、これで全員揃ったな。俺は今日からお前らの担任になる山田譲治、よろしくな」


 冷めた目とウィンクのコンボなんて見たくなかった。


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